研究概要 |
本年度は,まず移送器として用いる楔形ギャップ付き直交磁心の設計を行った。設計には,既に筆者らが提案している磁気回路法に基づいたリラクタンス・ネットワーク解析を用いた。この解析により,楔形ギャップの寸法によって機器の特性が大きく変化することがわかった。特に制御特性と電流歪み特性については,ギャップを大きくすると主巻線電流歪みは低減されるが制御特性が劣化し,逆にギャップを小さくすると制御特性は良くなるが電流歪みが強くなるため,両者はトレードオフの関係にあることがわかった。従って,用途に応じて適切なギャップ寸法を選定する必要あるが、研究代表者が提案している解析手法を用いれば,上記の特性が精度良く算定できるため磁心の設計に有用であると考えられる。 次いで,上記の解析手法を用いて1.5kVAクラスの直交磁心型三相可変インダクタの試作を行った。この三相可変インダクタを用いた基礎実験により,所望の制御特性と,ほぼ良好な電流波形が得ることができた。 次いで,移送器の基礎設計を行った。移送器は,直交磁心の他に,系統と90度位相の異なる電圧を得るための並列変圧器と,その電圧を系統に印加し,線路電圧の位相を変化させる直列変圧器で構成される。従って,変圧器の容量の選定や,システム全体のバランスも重要であるが,ここでは汎用の回路シミュレータであるSPICEを用いて,適切な容量の選定を行った。また,設計した移送器システムの動作をSPICE上で確かめた。その結果,電力潮流の制御が可能であることを確かめた。
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