本年度は、真空中における絶縁物上の帯電分布測定の高度化を行った。トリプルジャンクションにおける電子放出箇所の微視的観測においては、帯電の測定精度の向上が必要であり、これまで問題となっていた帯電測定時における光学的ノイズの原因を調査した。その結果、ノイズの原因は、主に真空チャンバのガラス窓における多重反射が原因であることが判明した。真空チャンバのガラス窓を反射防止膜付きのものと交換することで、より一層の帯電測定の高精度化を図る予定である。また、トリプルジャンクションの微視的構造観測と帯電の同時観測においては、電子顕微鏡のレンズ系の調整中であり、現段階では未だ同時測定までには至っておらず、実験装置の改良中である。 真空中における沿面放電時の帯電測定においては、正極性から電圧を印加した場合において、真空沿面放電の発生とその時の帯電分布の様子が明らかになり、更にその後、逆放電(バックディスチャージ)の観測にも成功した。また、負極性の沿面放電後の帯電分布を測定したところ、沿面放電直後(電圧印加時)の帯電分布とその後数msec経た後の帯電分布に違いが現れた。沿面放電直後においては、針電極周辺が負極性に帯電していたが、その後数msec経つと、何らかの原因により帯電の緩和が発生し、針電極の極近傍にのみ負極性の帯電が残り、その周辺に正極性の帯電が現れた。このような帯電分布は、これまで研究により発表されてきた帯電分布に酷似している。よって、本研究の結果がこれまでの研究の再現性を得ていること、更にこれまで不明であった放電直後の帯電分布が測定できるようになったことで、沿面放電後においても絶縁体上に帯電した電荷が変化していることが明らかになった。これらの結果は、真空中の沿面放電が発生する要因に帯電が密接に関係していることの裏付けであり、重要な知見であると思われる。
|