昨年度までのパルスコロナ放電の研究で、オゾンおよびNO分子は二次ストリーマ、準安定準位のN_2(A)は一次ストリーマで生成されることを示した。そしてラジカル生成を考える場合、従来のように一次ストリーマだけではなく、二次ストリーマも考慮しなければならないことを示した。今年度も引き続きレーザ誘起蛍光法(LIF)により様々なラジカルの二次元密度分布を測定し、OHラジカル、Oラジカル、振動励起O_2(v=6)が二次ストリーマで生成されることを示した。また、パルスコロナ放電と並んで非熱平衡プラズマにしばしば利用されるパルスバリア放電でも同様にラジカルを計測し、オゾンが二次ストリーマおよび沿面放電で生成されることを示した。バリア放電でのオゾン以外のラジカル計測は今後の課題である。 OHラジカルのLIFにより、OH密度とガス温度の二次元分布をパルスコロナ放電下で測定し、それぞれの放電後の時間変化を測定した。その結果、針電極先端近傍2mm程度の範囲では放電後の温度が非常に高く(600-1000K)、その他の放電領域ではガス温度は室温に近い(400K)ことを示した。また放電後に温度が上昇することも示した。原因として、N_2分子の振動緩和などが考えられるが、今後検討を要する課題である。このようにガス温度が針電極近傍のみ異なるのと同様、OHラジカルの放電後の挙動も、針電極近傍とその他の領域で著しく異なることを示した。このように、ラジカルの密度やガス温度は針電極先端付近とその他の領域で著しく異なり、放電のモデル化にはその差異を考慮しなければならないことを示した。 この他、パルスコロナ放電でOラジカルとオゾンを計測し、Oの減衰速度とオゾンの増加速度がほぼ一致することを示した。これはオゾンがO+O_2+M→O_3+Mの三体反応で生成されていることを裏付ける結果である。
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