研究概要 |
ホールスラスタの放電振動現象を抑え高効率化を図る目的で実験、解析を進めてきた。以下に進行状況、得られた知見を示す: 1.推進剤流入条件の評価実験:真空計測装置を購入し、現在測定系の構築を行っている。 2.放電振動及び推進性能測定:流入部形状が放電振動現象,推進性能に与える影響を評価する目的で、様々なオリフィス形状を持つ陽極を用いて放電振動,推進性能の測定を行った。その結果、流入密度を低くする様な大オリフィス径,外側オリフィス位置に対して、振動振幅が抑えられることを示した。また、テーパ形状オリフィスを用いた測定により殆ど貯気室条件のみが振動に影響を及ぼしていることが示された。推進性能測定としては、振り子式推力測定スタンドを製作し、スラスタの変位を非接触微少変位計で測定することにより、推力を算出した。算出された推力値から比推力、推進効率が見積もられた。測定の結果、大オリフィス径、外側オリフィス径の場合には壁における再結合によるイオン損失の増加により、推進性能が低下することが示された。以上の結果から、推進性能低下を抑えつつ放電振動の抑制を達成するためには、大きな径、外側位置で先細ノズル形状を持つオリフィスを採用する必要があることが分かった。 3.数値解析:粒子解析コードについては現在、その構築を進めている。また、同時に流体模型を採用した1次元解析により、磁場形状等による放電電流振動への影響について評価を行った。また、放電電圧振動を考慮した1次元解析により、放電電流振動の振動数(数10kHz帯域)と同程度かまたはそれ以下の振動数を持つ放電電圧振動が、放電電流振動に対して特に大きな影響を及ぼすことが示された。
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