本研究では、光通信機器用バックアップ電源として極小規模の太陽光無停電電源システムの開発・実用化を達成すると同時に、開発システムの概念をさらに展開し、様々な規模のコミュニティに柔軟に対応可能な分散ネットワーク構成の太陽光発電ローカル電力供給システムの構築を目的としている。本年度は上記目標に向けて、特に、太陽光発電(PV)システムの動作予測のための高精度計算機シミュレータ開発、およびシステム内の電力フロー制御アルゴリズムに関する検討を行った。 まず、PVシステムの動特性を高精度にシミュレーションする上で、システム構成要素の高精度なモデル化が極めて重要である。今年度は、特に、広く普及している鉛蓄電池を対象として、実験を中心にその充放電特性を明らかにし、高精度なモデル式の導出を行った。提案のモデル式は、自然対数を用いると同時に充電電流値自体をパラメータとして取り込むことにより、PVシステム内で様々に変動する充電電流値に精度よく追従して蓄電池充放電特性を表現することができる。その結果、PVシステム全体の動特性解析の精度を、従来のものよりさらに向上させることに成功した。その他、急峻な放電電流値変動を保証しうる蓄電池容量の算出プログラムも開発した。これにより、導入する蓄電池の種類、使用環境条件などに基づき、PVシステム内に設置すべき蓄電池の放電変動パターンを踏まえた適切容量を算出・評価することが可能になったと同時に、任意の負荷条件のもとで太陽電池容量と蓄電池容量のトレードオフ関係を定量的に評価することが可能となった。さらに、太陽光発電ローカル電力供給システム内の電力フロー制御アルゴリズムに関しても検討を行った。具体的には、有効・無効電力制御によりシステム内電圧を迅速に適正範囲におさめることを目指し、電力潮流計算に感度行列を導入して高速に電力操作量を決定する手法の開発を行った。
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