研究概要 |
本研究課題に対して,今年度は以下の研究活動を行った。 1.マルチレートシステムに基づく交流電動機の同定と制御に関する研究を遂行するにあたり,実験装置の開発を行った。本システムはDSPとソフトウェアによる信号処理,FPGAによるPWMシステムとマルチレート信号発生および電力変換器の練成による交流電動機制御システムである。 2.交流電動機の同定および制御におけるマルチレートシステムの概念を適用することの有効性を明確にするため,従来のシングルレートシステムに基づく交流電動機制御系の性能限界を実験的に検討した。その結果,シングルレートシステムにおいても若干の工夫を施せば,同定および制御が困難な極低速運転においても,極めて低負荷であれば安定な制御が実現可能であることを示した。したがって,提案するマルチレートシステムにおいては,これを凌駕する,すなわち高負荷に対して安定な制御を実現する必要があることを明らかにした。以上の結果により,IEEE/IES IECON2003においてBest Presentationおよび,船井情報科学奨励賞を受賞した。 3.マルチレートシステムの概念を導入したマルチレート形適応オブザーバを提案した。提案法によれば,交流電動機が本質的に有する不安定零点を安定領域に移動させることが可能であることを明らかにした。さらに,実験を行い,現段階で2.と同等の性能を実現できることを明らかにし,本提案法の妥当性を確認した。提案法は,さらなる高負荷条件でも安定な制御を実現する可能性を有しており,次年度では,その有効性を明らかにしたい。
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