高圧送配電系統用の各種電力機器設備においては、絶縁劣化の予兆現象である微弱な部分放電を如何にして早期に検出するかが重要な要素となっている。しかし、従来型の電気的測定法は電気的誘導雑音の影響を強く受けるため、系統運転時での適用が困難である。そこで本研究では、レーザ回折法を用いて微弱放電によって生じる超音波を検出し、電力機器設備の常時監視および絶縁劣化診断が可能な技術の開発を目指している。ここでは、微弱放電による低周波の超音波がレーザ光を横断・通過する際に、その領域内の屈折率変化に対応して生じる光回折波を検出する。本研究代表者は、平成14年度までに、水中で発生させた80kHz〜200kHzの低周波超音波とHe-Neレーザ光(波長632nm)との相互作用で発生した回折波の検出に成功していた。また、光回折波をステップインデックス型光ファィバで伝送できることを明らかにしていた。 本年度は、提案手法により検出される回折光の諸特性を明らかにするための研究を行った。具体的には、既存のHe-Neレーザとは発振波長ならびに出力が異なる半導体励起グリーンレーザ(波長532nm)を用いて、回折光強度に対するレーザ光源の波長依存性、出力依存性を調べた。次に、光回折波を増幅器と狭帯域バンドパスフィルタを介して測定し、回折信号以外の周波数成分を取り除くことによって検出下限の改善を試みた。結果として、レーザ光源に発振波長が短く発振出力が大きな半導体励起グリーンレーザを用いることで回折光強度が大きくなることを確認できた。すなわち、回折光強度がレーザ発振波長に反比例し、発振出力に比例することを明らかにした。また、狭帯域バンドパスフィルタを介して光回折波を測定することで、検出下限値を従来に比べて約5倍程度改善できることを明らかにした。
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