1 高温超電導線材の各フィラメントに流れる電流値は、各層におけるフィラメントの巻き線ピッチを調整することにより一定にできる。この電流値を一定にすることにより、線材の自己磁場損失を最小にできる。巻き線ピッチの値を決定するために、本研究者が独自に考案した電気回路モデルにより計算を行った。この計算法の正当性を確認する基準としてNorrisの式が採用できるのだが、両者の計算結果は一致しなかった。それに対して、高温超電導ケーブルにおける交流損失の測定結果と電気回路モデルによる計算結果は一致した。この原因を考察した結果、ケーブルにおける交流損失は磁化損失が支配的であるのに対し、線材では自己磁場損失が支配的であるため、線材の交流損失を計算する際に電気回路モデルにおいて超電導体の損失の基を電気抵抗として置き換えているのだが、電流-電圧特性が非線形である超電導体においては抵抗の概念は導入できないという結論に至った。現在、電流-電圧特性の非線形を取り入れたモデルを考案し計算プログラムを作成している。 2 上記計算結果に基づいて高温超電導線材を作成するため、線材を校正するフィラメントの作成試験を行った。Powder in tube方により、外径6mmのパイプを0.6mmのフィラメントまで線引きを行った。この工程中に2度の熱処理を行った。現在、超電導特性の確認およびフィラメントの集合による線材の作成を行っている。 3 直流および交流の超電導特性を測定するため、VEEおよびLabviewにより電流-電圧特性自動計測システムを構築した。上述した超電導体の電気特性の非線形さをモデルに取り入れるため、今後オシロスコープを使った特殊な計測が必要になることが予想される。
|