研究概要 |
2年目にあたる平成16年度は,成膜条件の最適化を行いつつ,作製した試料の輸送特性の測定を行った.単結晶MgO基板上に作製した試料では,電気抵抗の印加磁場角度依存性のc軸方向にディップが現れることが分かった.このような電気抵抗のディップは,c軸方向に相関を持つ磁束ピンニングセンターの存在を示唆するもので,Y123だけでなく様々なRE123で見られている.さらに,このディップの挙動を詳細に調べた結果,ゼロ磁場で作製した試料では,温度の増加に伴って一度消えたディップがまた現れるリエントラントがあることが分かった.従って,新たな磁束液体状態が現れている可能性を示している.さらに,磁場中で作製した試料では,このリエントラントが消えることも分かった.これらの試料におけるc軸相関ピンとしては双晶界面と粒界の両方が考えられるが,磁場によって特性が変化することから,粒界が中心的な部分を担っていると我々は考えている.磁場中で作製した場合には,面内配向性が向上することから,粒界ピンニングの場合はそのピンニング力が作製時の磁場の影響を受けると予想されるからである.これらの結果は,平成17年8月にアメリカで開催される低温物理国際会議において発表する予定にしている.また,銀基板上に作製した試料の表面状態を測定した結果,ゼロ磁場で作製した場合には大きな結晶粒ができるため,非常大きな凹凸が見られるが,磁場中で作製した場合には結晶粒径の減少に伴って表面荒さが小さくなることも新たに分かった.平成17年度はこれらの点について系統的な実験をすると共に,銀添加による組織変化の影響についても実験を行う予定としている.
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