本研究では、新しいナノ材料を創製するために、半導体結晶成長技術により作製可能な化合物半導体歪み多層ヘテロ構造と、電子線リソグラフィーや選択エッチングなどの半導体プロセス技術を組み合わせることにより、二次元電子ガスなど機能性を有する多層構造を内包するナノチューブなどの機能性立体ナノ材料形成技術の確立と、形成した機能性立体ナノ材料の電子物性・光学物性・機械物性の評価を行うためのナノ加工技術の開発を目的としている。また、将来的にはそれらを量子デバイス・マイクロマシン等へ応用することを目指しているものである。 本年度は、前年度遂行できなかった金属電極形成技術の確立、ならびに機能性立体ナノ材料の物性評価、とりわけ電子物性評価を目指して、真空蒸着による電極形成プロセス後の立体ナノ材料形成を試みた。 立体ナノ材料形成のためには、数10nm以下の薄膜金属電極の形成が必要となると考えられている。このため、電極となるAuGeNi合金の膜厚(10nm〜50nm)ならびに合金化温度(350℃〜500℃)を実験パラメータとして、そのオーム性の評価を試みた。しかしながら、用いた歪み多層ヘテロ構造と整合する実験パラメータを見出すには至らず、良好なオーム性を確認することはできなかった。主な原因として、以下のことが挙げられる。 1.設計した歪み多層ヘテロ構造の二次元電子層が深く(50nm)、合金化が二次元電子層まで到達しない。 2.設計と実際のドーピング量とに差があり、電気伝導率の低い多層ヘテロ構造となっている。 これらを解決するためには、歪み多層ヘテロ構造の薄膜化とドーピング条件の最適化が必要であり、実験的には多層ヘテロ構造の作製を行う必要がある。しかしながら、本年度中は作製用いる分子線エピタキシャル成長装置の状態が思わしくなく、これを行うことが残念ながらできず、当初の目標を達成するには至らなかった。
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