研究概要 |
化学気相成長(CVD)法を用いることでカーボンナノチューブを基板に直接成長させることができるようになった.CVD法で成長させたカーボンナノチューブには蝕媒として用いた金属が内包される.この点に着目して,本研究の目的はカーボンナノチューブにCoPt,FePtなどの合金を内包させることとした.本年度は基礎的なカーボンナノチューブの成長の特性と磁気特性を確認するために,触媒としてFeを用いたカーボンナノチューブを成長時間を変化させながら作製し,その構造と磁気特性を走査型電子顕微鏡(SEM),透過型電子顕微鏡(TEM),振動試料型磁力計(VSM)を用いて測定した. カーボンナノチューブは成長の初期段階では,ほとんど触媒金属を内包していなかった.また,この段階では,磁気異方性はあらわれていなかった.成長時間を長くするにしたがって,カーボンナノチューブが徐々に成長している様子がSEMにより観察された.カーボンナノチューブの成長にともなって,磁気異方性が現れ,膜面垂直方向が磁化容易軸となっていた.カーボンナノチューブの先端には円錐形のFe微粒子が観察ており,この微粒子の異方的な形状が磁気異方性の起源であると考えられる. さらに成長時間を延ばすと,成長時間が10-15分の時に膜面垂直方向の保磁力が1k0eと大きな値を示した.この原因を考察するために,TEMにより,さらに詳細なカーボンナノチューブの構造を解析した結果,カーボンナノチューブの先端以外にも,Feの微粒子が複数内包されていることがわかった.これらの微粒子の中にはワイヤ状の構造を持ったものが含まれており,これが大きな保磁力の原因であると考えている.また,この結果はカーボンナノチューブの成長時間が短い段階では(本研究の場合10分未満),触媒の金属の一部がカーボンナノチューブに内包されずに基板に残っていることを示唆している.
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