研究概要 |
固定電荷導入法として熱酸化法で形成した4〜5nmのSiO_2膜上に濃度1.0x10^4Mの塩化セシウム(CsCl)水溶液をスピンオン法により塗布し、電極形成後に熱処理(400〜700℃、窒素雰囲気中、30min)を施した試料の高周波容量-電圧(C-V)特性評価の結果、V_<FB>のシフトが観測され、導入されたセシウムイオンが膜中固定電荷として機能しうることを見出した。また、セシウムイオン塗布後の加熱温度の上昇にともない、フラットバンド電位のシフト量(ΔV_<FB>)の増大が観測され、加熱処理によりセシウムイオンのSiO_2/Si界面近傍への導入が促進されたと考えられる。一方、上記試料の熱的安定性評価(Bias-Temperature測定:250℃,1MV/cm)を行った結果、そのC-Vカーブに顕著なヒステリシスが観測された。SiO_2膜中のセシウムイオンはイオン半径が大きいため、150℃程度では比較的安定であると考えられる。よって、このヒステリシスはCsCl水溶液中に含まれるNa,K等の不純物の影響が大きいと予想される。 そこで、より不純物の少ない固定電荷導入法としてクロム酸セシウム(Cs_2CrO_4)の熱的分解を利用した真空加熱蒸着法によるセシウムイオンの導入を検討した。その結果、ΔV_<FB>=0.25Vで良好な熱的安定性が得られた。また、この蒸着法を用いることにより、導入イオン量の制御性が向上すると予想されることから、セシウムイオン塗布後の加熱処理の最適化を行うことで、より精密なしきい値電圧制御が可能であると期待される。
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