ゲート絶縁膜中に固定電荷を導入することでMOSFETのしきい値電圧の制御を確立することを目的として、CsCl水溶液のスピンオン法及びCs蒸着法によるセシウムイオンのゲート絶縁膜中への導入を図り、フラットバンド電位の制御に関する研究を行った。 CsCl水溶液のスピンオン法では加熱温度の上昇に伴い、フラットバンド電位のシフトが観測され、700℃の加熱処理において、約0.3Vのシフトが得られた。CsCl水溶液をスピンオン後、加熱処理を施すことにより、カウンターチャージであるClが脱離し、また、CsイオンのSiO_2膜中への導入が促進され、その結果、フラットバンド電位をシフトさせたと推測される。しかし、B-T測定により、10^<12>atoms/cm^2オーダーの可動イオンが観測された。これは、CsClに含まれるナトリウムなどの不純物によるものと考えられる。Cs蒸着法では加熱処理を施すことなくフラットバンド電位のシフトが得られ、そのシフト量はCsの表面濃度に比例し、約1.3×10^<13>atoms/cm^2において、約0.8Vのシフトを観測した。B-T測定により、Cs蒸着法はCsCl水溶液法に比べて、可動イオンの量が半減していることが確認され、フラットバンド電位のシフトはn型、p型、いずれの基板においても得られた。Cs蒸着後に適切な加熱処理(約750℃)を加えることによって、フラットバンド電位のシフトを更に増大させることに成功し、2次イオン質量分析結果から、これはCsイオンがSiO_2/Si界面へ移動した結果と考えられる。また、加熱処理によって、可動イオンの減少を全反射蛍光X線分光測定において観測した。High-kゲート絶縁膜へ応用としてHfO_2膜への固定電荷の導入を検討し、SiO_2膜より小さいがフラットバンド電位のシフトを見出した。
|