研究概要 |
超伝導を応用した電力機器の開発が活発に行われている。超伝導ケーブルや超電導コイルは,極低温,高機械的応力,高磁界など過酷な環境下に曝される。超電導体の冷却には液体窒素やヘリウム等の冷媒により完全浸漬冷却されているが,同時に冷媒は機器の絶縁にも利用されている。冷却効果を向上させるため冷媒は強制循環されることが望ましい。しかしながら冷媒の流動は極低温領域における電気絶縁に影響を及ぼすと予想される。特に,常温以上の領域で問題となっている,流動帯電に関して,極低温領域で検討された例は殆どなく,本現象による,超伝導コイルや超伝導ケーブルなどの極低温電力機器の絶縁耐力低下が懸念される。 本研究は,極低温領域の固体と冷媒の界面における流動帯電の発生メカニズムを解明し,流動帯電に関する技術的問題点を検討することにより,その解決法に対し明確な指針を与えることを目的とした。 結果として,流動による帯電は絶縁油に比べ著しく小さいことがわかった。同時に,極低温絶縁では室温に比べ,固体絶縁体中の耐トリーイング特性や絶縁破壊特性も向上した。また,固体絶縁体中に蓄積する空間電荷の影響も小さいことから電気絶縁設計上有利であることがわかった。しかしながら,極低温では熱エネルギーが小さいことから,流動耐電によって蓄積した電荷は長期に渡り抜けにくいことが予想された。さらに,複合絶縁系の絶縁破壊において,破壊電界近傍では電極から固体絶縁物へ電荷の蓄積がみられた。このことから,流動耐電と高電界における電荷の蓄積が重畳することで,極低温でもより低い電界で破壊が生じる可能性が示唆された。
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