研究概要 |
次世代の大容量光通信において,光ファイバが低損失になる波長1.5μm帯で広帯域の光通信用光源が必要である。1.5μm帯の高出力でスペクトル幅の広い光源が実現すると,光受動フィルタで分渡して多波長化することにより波長多重光通信が可能となる。本研究では,独自に開発したGaNAsSe半導体混晶を発光層材料に用いて,GaAs基板上で1.5μm帯の広帯域光通信用光源を開発することを目的とする。 本年度は,GaNAsSe/GaAs多重量子井戸を発光層としたダイオード構造をp-GaAs基板上に作製して評価を行った。発光層の格子歪の低減とデバイス構造の検討を進め,中心波長1.35μmで250meVと広い発光半値幅を持つエレクトロルミネッセンスを確認した。一方で,MOMBE法によるGaInNAs混晶の作製を進め,TEInをIn材料に用いることにより窒素の取り込みが増大することを見出し,GaInNAs混晶において1.55μm帯での発光を確認した。また,GaNAsSb/GaAs多重量子井戸を用いたダイオード構造において,室温においてピーク電流対バレー電流が6と大きな負性抵抗特性を示すことを見出した。マルチ負性抵抗特性も観察され,GaAs基板上の電子デバイス材料として有望であることを示した。GaNAsSe/GaAs多重量子井戸を用いたダイオードやGaNAsSe/GaAsトンネルダイオードにおいても明瞭な負性抵抗特性を観察し,GaAs基板上において1.55μm帯発光デバイスと負性抵抗特性を有する電子デバイスが実現できることを示した。
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