本研究では、強誘電体メモリ、弾性波フィルタ、圧電アクチュエータ、光デバイスなどに広く応用されている強誘電体材料の分極を、試料表面に対して傾斜しているような場合でも3次元ベクトルとして計測可能なシステムを開発し、強誘電材料のドメインの評価と、人工的に形成したドメインを利用した新デバイスの可能性を探求し、「3次元ドメインエンジニアリング技術」の基礎的な研究を行うことを目的として研究を行っている。 本年度は、研究代表者が考案した探針直下に回転電界を印加したときの非線形誘電率の変化に着目した新しい計測手法を用いて、将来重要な役割を担うと考えられる強誘電体などの極性材料の分極分布を3次元ベクトルとして計測・評価できるシステムを作製し、それを用いた材料評価技術の研究を行った。具体的には、 (1)非線形を生じさせるための電界の印加方法と電極構造の検討、 (2)微小な信号計測を行うためのノイズ除去の方法についての検討、 (3)試料の傾斜等による電界印加の不均一を補正するための、電位モニタの開発とそれによる補正電界印加のフィードバック機構の開発を行い、 (4)強誘電分極を3次元的に計測する3次元ベクトル走査型非線形誘電率顕微鏡システムを開発した。また、 (5)開発した装置を用いて、非線形光学デバイスに用いられる、周期分極反転LiNbO_3単結晶の断面を計測し、その分極分布の計測を行い、本システムの有効性を確認した。更に、 (6)開発した装置を用いて、90°ドメインを有する代表的な強誘電体の一つであるBaTiO_3セラミックス、及び単結晶を計測し、分極の面内方向成分と垂直方向成分を同時に計測することで、3次元的に分極方向を計測することに成功した。
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