研究課題
本研究の目的は、ナノ結晶シリコン(nc-Si)からの可視エレクトロルミネセンス(EL)の効率および安定性の向上である。これらを実現するために二つの主要な実験を試みた。まず、表面電極とnc-Si層との間に薄いカーボンバッファー膜を挿入する構造を提案し、EL発光効率が著しく増大することを明らかにした。発光特性の解析によると、カーボンバッファー膜はnc-Si層と電極との電気的接触面積を実効的に増大させる効果をもち、従来よりも非常に低い印加電圧(3V)でのEL動作を可能にした。同時に、カーボンバッファー膜は界面の機械的・化学的安定性の向上にも寄与している。この素子構成により、当該分野のトップデータである電力効率0.37%を達成し、3cd/m^2の発光輝度を得た。また効率の向上に加え、我々の作製したELデバイスは、印加電圧によってELスペクトルのピーク波長を制御することができるという、多色化につながる特性をもつこともわかった。効率と並行して、素子の安定性向上についても研究を進めた。一般に、nc-Siを用いたEL素子では表面自然酸化の影響を強く受けるため、発光強度が劣化しやすい。そこで、酸化を抑制する手段として、nc-Si表面に残存する不安定なsi-H結合を、より安定な共有結合に置き換え、EL劣化の主因となる非発光再結合欠陥の発生を抑えることを試みた。具体的には、1-デセンなどの有機材料を用いて試料に熱的処理を施し、nc-Si表面にSi-CまたはSi-O結合終端を形成した。その結果、ELの著しい安定化が実現され、数日間の直流連続動作の下でもEL強度が一定に保たれることを確認した。以上により、nc-Si発光素子の開発において最大の課題である高効率化・高安定化について、今後の発展につながる重要な知見が得られた。
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