研究概要 |
代表的な平面型マイクロ波伝送線路であるコプラナ(CPW)線路の基板裏面に溝を形成した場合および空気ギャップを介して線路基板の誘電率よりも高誘電率あるいは低誘電率の誘電体シート(AGS誘電体シート)を基板裏面に挿入した場合におけるマイクロ波漏れ損失特性について時間領域差分(FDTD)法により詳細な解析的検討を行った。その結果,溝のエッジや誘電体シートの空気ギャップ側エッジの効果によって漏れ波損失低減に対して最適な溝幅または空気ギャップ幅が存在することを明らかにした。 また,試作・測定実験によりコプラナ線路の漏れ損失特性並びに本提案構造の妥当性に関する実験的検証を試みた。本補助金で購入した基板加工(ミリング)システムを用いることで保管や管理が難しい薬品等を用いずに、様々な線路幅のコプラナ線路を高精度に作製することができた。しかし,現段階では周波数特性測定機器の測定可能最高周波数が12GHzと低いため,顕著な漏れ波特性が得られていない。本提案構造の低損失効果が現れる主要周波数帯はミリ波帯にある。今後,機器の使用周波数が高周波化の一途をたどることを考慮すれば,さらに高い周波数帯での漏れ波特性等を詳細に検討できる測定環境形成が急がれる。 なお,本研究で行った数値解析結果等については国際会議において成果発表し,溝を形成するあるいは誘電体基板を挿入するといった簡単な形状変更で漏れ波を低減できることについて評価を受けた。また,今後め多層回路への応用や漏れ方向のコントロールによる新機能素子への応用の可能性についての示唆も受けた。
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