本年度の研究において、以下の二つの応用に関する基礎データが得られた。 デュアルバンドハイブリッド/カプラ まず左手系線路の分散特性を、右手/左手系複合線路モデルにBloch-Floquetの周期境界条件を与えることで求めた。また、周期構造中のBloch波に対するインピーダンスの理論式を求めた。これらの関係から、任意の二つの周波数f_1およびf_2においてインピーダンスがそれぞれ50.0Ωおよび35.4Ω、電気長がそれぞれ±90度なる右手/左手系複合線路の設計式を導出し、これらを用いたデュアルバンド3dBハイブリッドの設計法を確立した。本ハイブリッドの動作と実現性を検証するために、まず電磁界シミュレーションに基づく単位セルに対する散乱行列解析から寄生インダクタンスを考慮した等価回路素子値の高精度な抽出法を確立し、この方法を用いて0.8/1.8GHzで動作する3dBブランチラインカプラを設計・試作し、その動作を数値シミュレーションおよび実験的に検証することで、本ハイブリッドの実現性を実証することができた。 全方向走査漏波アンテナ 平面型マイクロストリップ線路型で簡単な構造で安価に構成できる左手系媒質の実現とアンテナ応用例を実証するため、伝送帯域内でバンドギャップを持たないバランス型右手/左手系複合線路の構成法について考察した。バンドギャップが消失しブロードサイド方向に放射するための理論的条件を満足する単位セルの物理構造を電磁界シミュレーションにより求め、それを並べた周期構造に対して、反射特性、伝送特性、放射特性を理論的、数値解析的、実験的に求めた。試作した漏波アンテナに対する指向性特性測定により、10GHz帯で10%程度のわずかな周波数の変化に対して、放射ビームがブロードサイドを含む前方および後方へと約±30度以上の広角度に変化することを実験的に検証した。
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