研究概要 |
シリコン基板上に単結晶酸化亜鉛薄膜を製造する既存技術(特開2003-165793)を用いて,汎用性の高いシリコン基板上に単結晶の酸化亜鉛薄膜および酸化マグネシウム亜鉛薄膜を分子線エピタキシャル成長した.しかしながら,当該技術は生産技術の観点から不充分で,製造した単結晶酸化亜鉛膜に微細なクラック(割れ)が発生し易いという問題点を残していた.実験を重ねた結果,このクラックがシリコン基板,酸化亜鉛膜の二者とシリコン表面の酸化を防止する為に用いたフッ化カルシウム膜の熱膨張係数差によって発生していることが判った.そこで,熱膨張係数差の影響を抑制するためにフッ化カルシウム薄膜の成長温度を従来の650℃から300℃に低下させた.その結果,クラックの発生を完全に抑制することに成功した.この方法で製造した酸化亜鉛膜は,従来法で製造した膜と比べて,結晶性・発光特性・電気的特性のいずれも飛躍的に改善されていることが判った.すでに,この製造技術を特許に出願している(特願2003-385344). また,シリコン基板上にマグネシウムの組成比を正確に制御して酸化マグネシウム亜鉛膜を作製する技術を開発した.酸化マグネシウム亜鉛の成長機構をモデル化し,各構成元素の供給量(実際は蒸発ルツボの温度)の関数として成長膜の組成比を数式化した.この式は組成比の広い範囲で実験値によく一致するため,酸化マグネシウム亜鉛の組成比を蒸発ルツボの温度で精密に制御出来るようになった.また,当該科研費にて購入した紫外可視分光光度計を用いて酸化マグネシウム亜鉛の透過測定を行った.その結果,マグネシウムの組成比が増加すると吸収波長が近紫外線領域から中紫外線領域に遷移することが確認できた.これらの成果は,特定波長を選択的に検出する紫外線センサーを開発するための第一ステップである.
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