研究概要 |
昨年度に引き続き目標とする紫外線検出器の実現に向けて研究を行った.先ず,シリコン(Si)基板上に単結晶酸化亜鉛(ZnO)薄膜を製造する既存技術(特開2003-165793,特願2003-385344)を用いて,マグネシウム(Mg)組成の異なる酸化マグネシウム亜鉛(ZnMgO)混晶膜を分子線エピタキシャル成長した.ここで,ZnMgO混晶膜の成長モデルに基づく独自に開発した数式を用いてMg組成を厳密に制御した.低温ZnOバッファ層の導入および低温成長技術を取り入れることで,高いMg組成の単結晶ZnMgO混晶膜を得ることに成功した.作製した混晶膜に対して,分光光度計を用いて透過率測定を行った.その結果,Mg組成が増加したことで光学バンドギャップが3.3eVから4.5eVまで増大していることが判った. 次に,Mg組成の異なる単結晶ZnMgO混晶膜の上に40μm間隔の櫛形電極を蒸着し,5mm角の光導電型セルを試作した.このセルの分光感度特性を調べた結果,Mg組成の増加に伴って紫外線のカットオフ波長が380nmから300nmまで短くなっていることが判った.このことは,当該セルの検出波長が生活紫外線であるUVA〜UVBの領域をほぼカバーしていることを意味している. 光応答性に優れた紫外線検出器を得るためには,ヘテロ接合を利用してキャリアの輸送能力を高める必要がある.そこで上記技術を用いてZnO/ZnMgOダブルヘテロ構造を作製し,その電気的特性を詳しく調べた.その結果,ヘテロ界面における歪みの影響でピエゾ分極が発生し,ZnO井戸内に2次元電子ガスが形成されていることが明らかになった.これらの結果は,波長選択性と光応答性に優れたウェアラブルな紫外線検出器を実現する上で重要である.
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