ミリ波の伝搬特性等を電気的に制御可能なデバイスの開発を目的として、一次元の周期性を有するフォトニック結晶構造液晶セルの作製を試み、50GHz帯におけるミリ波透過特性の測定を行った。 二種類の配向膜を用いることにより、液晶分子の配向状態の違いによる波長程度の長さの周期構造を有する液晶セルの作製を試みた。作製した液晶セルを光学的に観察した結果、異なる配向状態による誘電率の周期性が確認できた。また、液晶セルに外部電圧を印加することにより、周期性がなくなり均一な配向状態となる様子が観測された。 誘電率の周期性を有することが確認された液晶セルの50GHz帯におけるミリ波透過特性の測定を行った。液晶セルに外部電圧を印加することにより、ミリ波の透過特性に変化が見られた。周期構造の透過特性に対する影響を調べるために、液晶を等方性誘電体と仮定することでミリ波の透過特性の計算を行ったが、実験結果との明確な一致を得ることはできなかった。次に、液晶と誘電体で構成された誘電率の周期性を有する液晶セルを作製し、ミリ波透過特性の測定を行った。しかしながら、印加電圧による透過特性への影響を確認することができたが、セルの周期性と透過特性との明確な関連性を確認することはできなかった。 以上より、誘電率の異なる液晶と誘電体、あるいは液晶分子の配向の違いによる誘電率の周期構造を有する液晶デバイスの実現が可能であることがわかった。また、周期構造液晶セルに外部電圧を印加するすることによりミリ波の伝搬特性に変化を与えることから、ミリ波制御デバイスへの可能性を有するものと考える。しかしながら、さらに高精度の測定が行えるようにミリ波測定システムの構築と測定セルの改良が必要である。また、周期性を有する液晶セルのミリ波伝搬特性に対する影響に関して、より詳細に解析を行う必要がある。
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