研究課題
PNIPN構造の各ドープ層に電極を形成し、PNIP、NIPN、2種類のトランジスタのベース・コレクタ接合を活性層として共有する半導体レーザを提案してきた。提案するレーザは、活性層(または活性層近傍の電子走行層に)逆バイアスを印加しながら電流注入が可能で、レーザ発振を維持することができる。シミュレーションを通じて基本設計を実施してきたが、デバイス動作をいよいよ実験で確認するために、プロードエリアストライプ構造で、表面3電極、裏面1電極のデバイスを試作した。n+InP基板上に各ドープ層をInP層として成長し、活性層はQ1.25のInGaAsPをSCH層および障壁層とする1.55μmに発光ピークをもつ3重の歪み量子井戸構造である。電流注入と引き続くレーザ発振の達成を目的として、電子走行効果発現のためには重要となる電子走行領域層は省略する構造とした。作製した半導体レーザの電気特性評価を通じて、設計通りの極性をもつ成長層構造ではあったが、ベース層での不純物活性密度が低いことが電気特性上の問題になると判明した。これは、今回、結晶成長に利用したMOVPEシステムでは、導入不純物種の制約で、Si(N型)、Mg、C(P型)といった高濃度のドープに利用される材料が適用できないために、成長条件の改善では対応が困難である。結晶成長について外部業者に発注するなど、成長装置を乗り換える必要を指していて、本研究の年限内では解決が困難であった。ここでの電気特性上の問題とは、ベース層へのコンタクト抵抗とオーミック性の確保の2点である。このため、所望のデバイス電気特性(トランジスタ動作)を得るに至らなかった。上面より3電極、下面より1電極を形成するデバイス構造自体は、通常の半導体レーザ構造基板に同様のデバイスを製作し、発振動作を確認できたことから、ここにおける問題ではない。結晶成長を最適な材料を用いてやり直すことにより、提案するレーザの製作を再度行うことを予定している。
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Applied Physics Letters Vol.85,No.14
ページ: 2733-2735