研究概要 |
本年度に行った研究業績を要約すると次のようになる. 1.量子情報のセキュアな伝送のための量子誤り訂正符号に対する通信路モデルの提案 量子情報のセキュアな伝送のため,量子通信路に流すことが想定される,一部の量子ビットの誤りにのみ対処する,特定位置量子誤り訂正符号を包含する,一般的な通信路モデルとして,高信頼量子メモリなどの信頼性の高い通信路と,盗聴者の存在するような信頼性の低い通信路からなる通信路モデルを提案した. 2.m量子ビット情報のセキュアな伝送のための量子誤り訂正符号の構成及び復号法 量子情報のセキュアな伝送のための特定位置量子誤り訂正符号の考察を行った. 一般のm量子ビットの伝送に対応する,(3m,m)符号を提案し,そのスタビライザーを導出した.また,スタビライザーの測定に基づくオーソドックスな復号が可能であることを示した.加えて,量子プロトコルへの応用をした際に本質的な,一部の量子ビットのみを用いた復号法を提案した.この2つの復号法のいずれの場合も,量子符号の先頭m量子ビットについての任意の誤りを訂正可能であることを示した. 3.(3m,m)量子符号による量子情報のセキュアな伝送プロトコルの検討 量子情報のセキュアな伝送のために,2の量子誤り訂正符号を適用する手法を検討した.量子通信路を通して,量子符号の中の一部の量子ビットの伝送が完了した後,量子テレポーテーションの応用により,送りたかった量子情報を受信側に伝えることが可能かどうか,送受信者間のエンタングルメントを計算することにより,考察した.その結果任意の入力量子情報に対して,エンタングルメントがm-ebitsあり,テレポーテーションが原理的に可能であることが示された.
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