研究概要 |
OFDM通信方式におけるピーク電力問題の解決を目指して,本年度は(1)ニューラルネットワークの改良,(2)回路規模縮小のためのモデルの提案,(3)試作回路の設計を行った.(1)では,昨年度までに考案していたホップフィールドニューラルネットワークによるモデルの性能を改善するため,カオスニューラルネットワークを導入してその改善を試みた.結果として局所最小点の問題が比較的抑制され,高いピーク電力抑圧性能を得ることができた.(2)では,高い性能を有するカオスニューラルネットワークをデジタル回路で実現するための改良を行った.本来カオスニューロンの出力は滑らかなシグモイド関数を用いるが,実数計算を必要とするシグモイド関数は回路規模増大の要因となる.そこで回路規模が小さいステップ関数としたモデルを提案した.ステップ関数を出力関数とするニューロンはニューロンの出力が実数からバイナリとなるため,ニューロン出力用レジスタの回路規模が小さくなり,さらなる回路規模低減を図ることができる.提案モデルの性能を数値実験により検討した.実験の結果,本来ステップ関数であれば正確な意味でニューロン出力の時系列はカオスとはならないが,本問題における最小点探索にとって大きな問題とはならず,従来のモデルと同等の性能が得られることを確認した.(3)では,シナプス結合回路およびニューロンの内部状態更新回路の設計をハードウェア記述言語VHDL(VHSIC Hardware Description Language)により行った.ターゲットデバイスをxilinx社製FPGA XC2V6000として設計を行った結果,十分な速度および規模で提案モデルを実現できることを確認した.以上の研究結果は,電子情報通信学会ソサイエティ大会,NC研究会で発表した.また2004年7月に開催される国際会議IJCNN2004に投稿中である.
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