研究概要 |
デジタル通信システムにおいては、送信信号がチャンネルの周波数特性により符号間干渉を受ける。通常これに対応するのはトレーニング信号を用いた適応等化器である。しかし、これは伝送スループットの低下を招くため、近年、トレーニング信号を用いることなく等化器設計を行うブラインド等化器が注目される。 一方、等化器は逆フィルタリング問題およびベイズ理論による判別問題の観点から設計することができ、判別問題の観点からの等化器設計では、チャンネル同定を行わず送信信号を復元し得ることから、判別問題観点からのBayesian等化器が注目されている。 本研究では、Bayesian等化器のセンターが受信信号ベクトルの特徴により決定されることから、同特徴を利用した新たなブラインドBayesian等化器の設計方法を提案した。提案法では、先ず受信信号の相関関数からチャンネルの長さを求め、等化器の次数と遅延を決定する。それにより等化器の内部構造を表すクラスターマップが作られる。次に、教師なしクラスター学習方法を用いることにより、受信信号からラベルなし受信信号クラスターを抽出する。これらのクラスターと先に得られたクラスターマップを整合させるという新しい概念で、等化器を設計する。同時に、独立な受信信号コンステレーションチャンネルに対する受信信号クラスター同士間の関係を探し出す。その関係に基づいて、複雑なコスト関数を計算せず、簡単な並べ替え操作だけで整合させる有効な方法を提案した。更に、教師なしクラスター学習方法の負荷を軽減させるため、受信信号の二次元クラスターから多次元クラスターを求める方法も提案した。最後に、フィードバック状態を利用する、ブラインドBayesian判定帰還型等化器も設計した。なお,提案手法の有効性について計算機シミュレーションとDSP実験により検証した.
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