本研究では、非一様結合カオス系において、所望の特性を有するカオス的な動作を実現し得るパラメータの設定を従来の分岐解析などに比べて少ない計算量で行う手法の確立を目指す。具体例としては、連想記憶カオス神経回路網モデルにおいて、記憶パターンの遍歴的想起と軌道不安定性を共に実現するパラメータの設定法の確立および制御によるこのような動作の実現を目指している。 本年度は、カオス神経回路網モデルにおいて、記憶パターンの遍歴的想起と軌道不安定性を両立させるカオス的な動作を実現し得るパラメータの設定手法として、以下の2種類の手法を中心に研究を遂行した。 (1)強化学習を用いたカオスの反制御を用いて16素規模の結合カオス系において、周期的振る舞いを示すパラメータを標準パラメータとして、この系に対してカオスの反制御を行ない記憶パターンの遍歴的想起を実現することに成功した。また、この手法の最適化問題用カオス神経回路網モデルへの適用を試みた。 (2)間欠的カオス状態を基底状態とするカオス神経回路網モデルに対して、軌道がラミナー部に陥る直前を捉えて摂動を加えることによるカオスの維持の手法を提案し、小規模の連想記憶カオス神経回路網モデルにおいてその有効性を確認した。 また本年度には、非一様結合カオス系におけるパラメータ設定のための基礎的検討として、結合カオス系の回路実装などを考慮した場合に重要となるパラメータ値にばらつきがある場合におけるこのシステムの基本的な性質について検討し、このような系における軌道不安定性の評価法を従来法の拡張として与え、この評価法の有効性を示した。
|