研究概要 |
携帯電話における通信中の雑音やDVD等の記録メディアの傷などによる誤りの訂正を目的とした誤り訂正符号として,近年ターボ符号が盛んに研究されている.これは従来の誤り訂正符号を効果的に組合せて用いることにより,C.E.Shannonにより示された,最良の限界に近い性能を達成する優れた符号である.しかし従来のターボ符号は情報を推定するのに時間を要する,復号遅延問題を引き起こす.大容量のデータを高速に通信,処理を行うためにはこの復号遅延の問題は深刻である.また具体的に構成された符号に対し,その性能を理論的に保証する構成法は確立されていない.そこで本研究では構成法に関しては従来の主な研究と異なり,並列処理を可能とするターボ符号の構成法を扱う.そのためにターボ符号の構成要素となる誤り訂正符号にブロック符号を選ぶブロックターボ符号を対象としている. 従来様々なターボ符号の平均的な復号誤り確率を求めることは可能であったが,具体的に定めたターボ符号の復号誤り確率を理論的に求めることはできていない.そこでまず本研究ではターボ符号の符号空間上に分布している符号語の重み分布構造の中で,復号誤り確率に最も影響を及ぼす符号語集合の分布を厳密に求める手法を開発した.具体的には情報の重みが4以下の符号語集合の重み分布を高速に求めることを可能とした.これにより復号誤り確率のかなり正確な近似値を求めることが可能となった. またこの結果を用いて,復号誤り確率が小さいブロックターボ符号を設計する手法を提案した.これは情報の重みが小さい符号語の重みを大きくするように符号を構成することにより実現される.この符号を構成する計算量もさほど大きくはない. さらに,提案手法で構成したブロックターボ符号と,復号誤り確率の近似値を計算機シミュレーションにより検証,評価を行った.結果的に従来の手法よりもかなり良好な復号誤り確率を示す符号が構成されており,またその復号誤り確率は重み分布から求めた近似値とかなり一致している.
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