研究概要 |
本年度の実績は,拡張BVP方程式について,系にみられる平衡点およびリミットサイクルの分岐を詳細に解析した.回路において抵抗値で容易に変更できるパラメータ二つを選んでその平面による分岐問題を,二点境界値問題として数値積分とニュートン法を応用して解いた.得られた分岐図により,様々な分岐とそれらがみられる具体的な抵抗値を同定でき,実際に回路実験においてアトラクタを確認した. この一連の解析により,Jack-in-the-box現象と呼ばれる特異な応答が得られるパラメータ領域も特定された.次にJack-in-the-box現象を与えるパラメータ値において,サドルとなる原点における二次元安定多様体を計算した.この平面は原点の複素安定固有ベクトルから規定されるが,逆時間の数値積分を精度保証しながら計算を進めた.結果,原点より近い領域では,若干多様体がゆがんだものの大きく変形していないことが分かった.しかし,原点から十分離れた空間での多様体の計算は誤差が大きく蓄積し,視覚化が困難となった.つまり,研究の焦点となる,ぼやけた圏境を与えるパラメータ値では,まだ大域的な多様体の形は不明であり,来年度究明して行く. これらの作業とは平衡して,Jack-in-the-box現象の発生機序を説明するモデルの構築を行なった.上記分岐解析と併せて,リミットサイクルの接線分岐による消滅が軌道の吸引に大きい役割を果たすことが判明したので,現象発生までの大域的振る舞いのモデルをこれらの分岐を中心に構成し,現象を十分説明することができた.
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