研究概要 |
近年の省エネルギ化・環境対策の面から様々な分野において気体の非定常流量計測の要求が高まってきている.なかでも,気体の非定常流量計測が可能な速応性の良い小型流量計の要求は非常に高い.この要求を満たすため微細熱式流量計の研究が盛んに行われてきているが,速応性はいまだ不十分である.本研究では新しい構造の微細熱式流量計を新たに開発し,実験を通して非定常流量計測への可能性を模索した. 一般に微細熱式流量計には定電力駆動方式と定温度駆動方式があるが,これらの理論背景および数値解析的見地から比較検討し,本研究においては定温度駆動方式を採用した. 提案する新しい微細熱式流量計-マイクロフルードセンサはこの方式を採用することで,構造の簡易化を実現した.具体的な構造はチッ化膜付きシリコンチップ上に二組の白金抵抗線を蒸着し,一方の白金抵抗線の蒸着部分を穴の空いた面構造とした.また今年度はラージサイズモデルの試作を行い,スパッタリング,RIEといった各技術の製作最適条件を実験的に求めた.特にセンサの主要素となる白金抵抗線に関しては,形成のための条件選定に加え形成された白金抵抗線特性を実験的調べ,センサに十分利用できることなどを確かめた.その結果,それぞれの微細加工技術を統合し5mm四方のラージサイズモデルの試作に成功した. 続いて,試作したセンサを用いて定常流量計測実験を行い,出力信号の取り出しまでは可能であることを確認した.さらに,非定常流量発生装置を用いて振動流を発生させ,その応答を計測した.現時点では,数Hz程度の低周波領域においても位相遅れおよびゲイン不足が確認されている.この原因として,センサの設置位置や流速分布の影響などが考えられ,次年度の課題として取り組む予定である.さらに,本センサの動特性の向上に寄与する高速応答が可能なセンサ構造についても検討を行う予定である.
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