宇宙利用が大規模化する昨今、宇宙プラズマ環境の衛星観測や理論・シミュレーションによるモデリングなど種々の研究がすすめられているが、従来の磁気圏観測は衛星を現場に送り込み、「その場(in situ)」を直接計測する形態が主であったため、磁気圏全体の巨視的な変動の把握が困難であった。これに対し本申請課題では、申請者らによって提案されている確率差分方程式を利用した「柔軟な」モデルを用いたプラズマ圏内の電子密度空間分布推定法を発展させ、自然電波の特性からプラズマ圏の電子密度分布を求めるリモートセンシング法の検討を行なった。 初年度である平成15年度は、下記の二つの項目について検討を行なった。 (1)雷起源の自然電波であるホイスラー波の自動検出アルゴリズムの開発 申請者が提案する電子密度推定法では、衛星搭載の受信器で電・磁界ベクトルの同時測定データからホイスラー波のスペクトル(伝搬遅延時間)と伝搬ベクトルを求めるために、ホイスラー波特有のスペクトルを自動検出する必要がある。本研究においては、ホイスラー波のスペクトルの特徴を利用したハフ変換による方法と、計算量の削減を目指した単純な伝搬遅延時間の差分検出方式による方法の2つについて検討した。その結果、典型的なホイスラー波の検出は可能になったが、今後、近似した分散関係を満たさないホイスラーやS/N比が悪い場合について、更なる検討が必要である。 (2)ホイスラーのスペクトルとプラズマ圏内の電子密度分布の対応の一意性の定量評価 本研究の最終目標はホイスラーの特徴から電子密度分布を導き出す逆問題であるが、事前検討として、電子密度分布が与えられたとき一意にプラズマ圏内のホイスラーのスペクトルの空間分布が規定できることを定量的に確認した。
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