研究概要 |
ステンレス鋼SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼は、家庭用品から原子力製品まで幅広く使われている。オーステナイト系ステンレス鋼は、室温ではオーステナイト単相であり、非磁性であるが、応力を受けることによってマルテンサイト相へと相変態する。マルテンサイト相は、磁性をもつので、磁気的なセンサを用いることによって、その変態量を定量的に検出することが可能である。つまり、オーステナイト系ステンレス鋼材の疲労状態を、磁気的なセンサによって定章的に評価することが可能である。このように磁気的なセンサにより疲労状態を評価したオーステナイト系ステンレス鋼材に対して、更に電磁誘導加熱を用いて熱処理を施し、その疲労状態を経和あるいは回復する手法牟確立しようとするのが本研究の概要である。本年度は、4種類のオーステナイト系ステンレス鋼SUS304,SUS304L,SUS316,SUS316Lに対して、引張試験を施し、各ひずみ状態における漏洩磁束の測定を磁気センサによって行った。SUS304,SUS304Lについては、ひずみと磁気特性の間に相関があることが以前より報告されていたが、SUS316,SUS316Lに対しては、高感度な磁気センサを用いることによって、今回初めて、ひずみと磁気特性の間に相関があることが明らかになった。更に、SUS316,SUS316Lが破断する直前に、破断予想部の磁気センサの信号が局所的に増加することが明らかになった。これは、磁気センサを用いることによって、破断以前に、破断部を特定できることを意味する。以上により、高感度な磁気センサを用いることによって、原子力発電所等の悪環境下で用いられているSUS316,SUS316Lに対しても、金属疲労の測定が可能であることが明らかになった。本年度の結果を踏まえて、次年度以降の金属疲労回復システムの構築に取り組んで行く。
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