研究概要 |
衛星あるいは航空機搭載の映像レーダ,特に合成開口レーダ(SAR)に関わる技術は急速に発展を遂げ,空間分解能の向上を目指したシステムが国内外で計画されている.高分解能システムは,都市域のリモートセンシングや点目標の検出に圧倒的な能力を有するが,森林や海洋などの分布ターゲットを撮した場合,データの統計的なふるまいや物理情報の抽出手法について未解決の問題が山積している.高分解能化によりターゲットの空間的な構造を十分に捉えることが可能となり,いわゆる"テクスチャ"に対する理解が鍵となる.このことを鑑み,本研究課題では,主として以下の3つのことがらを明らかにすることを目的としている. A.テクスチャの空間的相関 B.テクスチャと偏波の関係 C.テクスチャとスペックルの関係 まず,Aに関し,相関のあるテクスチャを有する(K分布に従う)高分解能なSAR画像のシミュレーション手法を開発した.SAR画像の解析において,テクスチャとは,撮像される表面に固有な空間的多様性や,散乱の物理的な機構に由来する揺らぎをいう.このような強度の揺らぎは,対象が一様なシーンであっても,画像内に統計的な暗い線状模様をもたらす場合があるが,高分解能化によりテクスチャの相関が高まるにつれ,そのような物理的に無意味な線状パターンの生起確率がより高まることを,シミュレーション画像において明らかにした. 次に,Bについての研究に着手するにあたり,実際の多偏波航空機レーダの観測公募に,北海道苫小牧の管理森林の撮像実験が採択された.既に冬期の実験において,必要な較正情報やグランドトゥルースを取得しており,来年度早々から本データにおけるテクスチャと偏波の関係の解析を開始できる.
|