研究概要 |
本研究の目的は確率的部分空間同定法を確率実現の立場から見直し,有限個のデータに対して対応できる新たな確率的部分空間同定法のアルゴリズムを提案することにある.本年度は,ヒルベルト空間上のLQ分解に基づく新たな確率実現法を提案し,その結果に基づいて確率的部分空間同定法を提案した.具体的な研究成果は以下の通りである. 1)無限個の時系列あるいは,無限個の正確な共分散行列が与えられる理想的な場合について考察し,Hilbert空間を導入してLQ分解に基づく新たな確率実現アルゴリズムを提案した.提案したアルゴリズムによって,定常リカッチ方程式を解くことなくイノベーション表現が得られる.この結果は査読のある国際学会SYSID2003で発表している. 2)有限個の正確な共分散行列が与えられる理想的な場合について考察し,Hilbert空間上のLQ分解を用いて有限区間上の確率実現を求める新たなアルゴリズムを提案した.提案したアルゴリズムによって,非定常リカッチ方程式を解くことなく時変なイノベーション表現が得られる.この結果は査読のある国際学会ECC2003で発表している. 3)上記の結果を有限個の時系列が与えられる場合へと適用し,リカッチ方程式を陽に用いない新たな確率的部分空間同定法を提案した.さらに数値シミュレーションを行ない,約1万個の時系列に対して良好な結果を得た。この結果は査読のある国際学会CDC2003で発表している. 4,5)異常値が含まれる場合の部分空間同定法についても考察し,システム制御情報学会論文誌に投稿し掲載された.またEMアルゴリズムを用いて考察し,SSS2003の予稿集に採録された.
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