研究概要 |
本研究では得られたデータに矛盾しないモデルで最もよくデータに適合するMost Powerful Unfalsified Model(MPUM)および,伝達関数で表現可能なControllable Minimum Complexity Unfalsifed Model(CMCUM)に関して,補間理論およびビヘイビアアプローチの観点から研究を進めている.また,この研究は,ロバスト制御のためのシステム同定の一つの重要なテーマであるH∞実現問題とも関連があることから,その計算機指向を目指したアルゴリズムについても研究を進めている. 本年度得られた成果としては以下の点が挙げられる. (1).本研究で中核をなす補間理論は消散性とも深く関連しており,そのような立場で消散性に関する理論的研究を行った.特に,蓄積関数は消散性において重要な役割を演じているが,離散時間においては蓄積関数がシステムの状態関数で表されるための十分条件を完全に導出した.そしてこの成果はSIAM Journal on Control and Optimizationに掲載された(次頁の1段目の研究実績,以降数字のみで表す). (2).同じく補間理論の基礎としての消散性の研究として,「一様消散」(Totally dissipative)という概念を提案し,必ずエネルギーを消散するようなシステムの性質を必要十分条件の形で導出した.なお,これは2004年の国際会議MTNS2004で採択(研究実績4)が決定し,現在論文としても投稿中である. (3).(1)と(2)を応用することによりノルム条件つきMPUMの構築の際に必要になるスペクトル分解の新たな結果を導いた.具体的にはユニモジュラ行列のスペクトル分解の理論とアルゴリズムの提案,および離散Jスペクトル分解の新アルゴリズムである.これもMTNS2004で採択が決定した(研究実績4). (4).Caratheodory-Feijerの補間理論に基づく1入出力系のH∞ノルム条件つきのMPUMの存在条件(必要十分条件)および構成アルゴリズム,そしてCMCUMを構成するための条件とアルゴリズムをビヘイビアの枠組みで完全に導出した.結果はSystems and Control Lettersに掲載された(研究実績2). (5).MPUMを応用したフィルタの設計を現在,考察中である.その前段階として,最小二乗規範フィルタの設計を試みているが,その理論的基礎としてのH2制御問題に関する設計法をビヘイビアの枠組みで導出し,国内の学会誌に掲載された(研究実績3).
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