研究課題
交通信号システムに対して制御系設計を行なうにはそのモデルが必要となる。今年度は交通信号システムのモデリング手法の研究を行なった。これまで、交通量が飽和状態にあるという仮定の下で、交通量収支に基づいたモデリング手法が提案されていた。しかしながら、この手法は理想的な交通状況を仮定しており、現実の複雑な交通状況を反映しているとは言えない。一方で、より現実的な交通状況を生成し、交通評価を行なう目的でさまざまな交通シミュレータが開発されてきた。今年度は交通シミュレータを用いた、より現実的な交通信号システムのモデリング手法について研究を行なった。経緯としては、まず昨年度導入したTSISを利用することから始まった。これはCORSIM (NETSIM, FRESIM)をベースにした交通シミュレータであり、これまで世界的に広く利用実績があった。しかし、本研究ではシミュレータ外部から信号制御プログラムを組み込まねばならず、このような利用は通常の利用範囲を越えていた。実際、詳細な調査の結果、外部プログラムを組み込むためのTSISのソフトウェアにバグがあり、本研究の用途には利用できないことが判明した。そこで、AIMSUNと呼ばれる交通シミュレータを導入した。この交通シミュレータを用いることによって、信号機のパラメータをリアルタイムで外部から制御することが可能となった。このような環境を構築した上で、従来法よりも近似精度の高い線形状態空間モデルの推定法を提案した。また、従来のモデリング手法では適用される交通信号システムが限定されていた。これは、理想的な交通状況を仮定していることと、得られるモデルの可制御性に関係している。本研究では、その対策として、システム同定法による交通信号システムのモデリングが有効であることを示した。
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Proc.35th ISCIE International Symposium on Stochastic Systems Theory and Its Applications
ページ: 152-157
Proc.11th World Congress on ITS Nagoya, Aichi 2004, Japan (CD-ROM)