本課題最初の本年度は、エネルギ供給率のマッチングと非線形接続をアイディアとする複雑システムの解析と設計の新たな理論の構築を目指し、まず基礎理論の創出に専念することから始めた。「供給率の非線形接続」と「供給率のマッチング」という着想それぞれが如何に複雑非線形なシステムの解析に有効活用できるのかを、過去から代表的、あるいは、よりアドバンスな供給率やモデルの例を具体的に使いながら突き詰め、それを整理して一般定式化することで基礎的アイディアをまとめ上げた。 研究代表者が現在までの研究の過程でバラバラに生み出してきたいくつかの理論的部品を、統一的に新たな表現の観点から見直すことからはじめた。融合の過程には新たな多くの発想を要したが、その結果、様々な非線形性を持つダイナミック要素について状態依存のスケーリングを用いた供給率の非線形接続により、結合システムの安定性が統一的に導けることがわかった。これまでの研究代表者の研究により、スタティック要素やスタティックな結合については、状態依存のスケーリングを施したL2ゲイン条件から結合システムの安定性が導けることがわっていたが、ダイナミック要素やダイナミックな結合の場合にも、ふさわしく選んだ集合に属する状態依存スケーリング関数を利用することで、動的ゲインの意味を持つ供給率から結合システムの安定性が導けることが明らかになった。さらに、L2ゲインの有界性は複雑非線形システムに課すには厳しすぎることにも注目し、L2ゲインを脱する表現として入力状態安定(ISS)の理論を吸収かつ発展させる方向から供給率の一般化へ取り組んだ。これにより、ISS理論が強い非線形性に有効である仕組みをうまく継承した、さらに広いクラスの供給率に基づく解析理論の骨組みが一部出来上がった。研究代表者の予想通り、「供給率の非線形接続」には、非線形ゲインや状態依存型スケーリングの概念が研究に非常に有効であり、これらを拡張利用して供給率を自由変数でパラメトライズすることもできた。この自由変数は「供給率のマッチング」に大いに役立つことが期待できる。 このようにして得られた研究初段階の成果を、速報として国内および国外の研究集会・会議で発表、投稿した。
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