研究概要 |
本研究課題は,部分空間同定法による匂い認識アルゴリズムの構築とハードウェアへの実装を目指すものである。基本となる部分空間同定法に関して,これまで提案してきたSchur complementに基づく部分空間同定法に対する新しい枠組みによって,補助変数法によって個々に解釈がなされてきたが,変数誤差モデルに対しても同様に解釈可能であることを示し,広範な雑音モデルを統一的な視点から捉えることが可能であることを示した。 さらに,基本的な部分空間同定法として知られるVerhaegenらによるMOESP法において,データ行列のQR分解を行うのに対し,提案法ではデータ積率行列のSchur complementを抽出するが,従来法と比較して数値的にも等価な結果が得られることを示し,その有効性を検討した。 また,水素に対する高選択性を有する半導体センサ素子を中心とした素子と雑ガスに対して応答を示すセンサ素子を用いてアレイ構築を行い,火災の早期検知のための匂いセンサの検討を行った。不完全燃焼時に発生する水素を主ターゲットとすることが,従来型の火災報知器等では検知できない火災のごく初期段階の検知に有効であることを示した。さらに,本アルゴリズムが適用可能なセンサ方式の拡大を目指し,センサ素子材料表面への匂い分子の吸着を屈折率変化として検出する表面プラズモン共鳴(SPR)を利用した高感度匂いセンサの開発に関する基礎的な研究を行い、その可能性を検討した。
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