研究概要 |
ASRにより劣化したコンクリート構造物にかかわらず、コンクリート構造物におけるはく離・はく落防止対策は、利用者および第三者に対する安全性を確保するために、その確立が急務とされている。本研究では、FRPシートおよび高靭性セメント系複合材料に着目し、補修後の対策効果の耐久性に与える影響が大きいと考えられるアルカリ骨材反応による劣化機構を対象として検討することとした。15年度においては、反応性骨材を使用したコンクリート供試体を作製し、材料特性の異なるFRPシート材料を用いて、各暴露環境下における、膨張挙動の把握を行い、FRPシートの材料特性が膨張抑制効果に与える影響を明らかにした。また、高靭性セメント系材料については、断面修復材としての適用を前提とし、それらをはく離・はく落防止対策に用いた場合の材料特性について基礎的な検討を行い、配合およびその機械的性状を確認した。 16年度においては、それらの供試体を用いて、補修後の対策効果の耐久性を検討するために、劣化進行に伴うシートとコンクリートの界面性状を検討することとし、蛍光顕微鏡による界面組織の観察(微視的ひび割れ性状の把握)、電子顕微鏡による界面組織の観察、さらには、界面の微小硬度測定を実施した。FRPシートの機械的性質が膨張に伴う界面のひび割れ性状に与える影響はきわめて大きいことを明らかにした。同様の検討をECC材料についても検討した。 17年度においては、これまでの検討結果を総合的に評価を行った。ASR膨張に伴う適用後の補修材料の性能の変化を把握することができ、また、材料特性がこれらに与える影響も把握することができた。さらに,塗膜系に用いられるはく離試験による方法とはく落防止性能を検討するために考案されている押し抜き試験方法との関係を明らかにし,膨張に伴うシートの付着性能の定量化が可能であることを明らかにした。一連の検討結果から実構造物での補修後の性能変化を把握することが可能であるとともに、より実用的なFRPシートの材料選択が可能であることが明らかとなった。
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