鉄筋コンクリートにおいて、腐食に伴う部材耐力の低下に起因する耐用年数を設定する基本的なモデルを構築できた。すなわち、本研究の成果を3ステージに分類し、下記に列挙する。 (1)ひび割れを考慮した鉄筋コンクリート部材におけるマクロセル腐食速度解析モデルを提案できた。すなわち、マクロセル腐食速度を解析するため、鉄筋のアノード分極曲線・カソード分極曲線、鉄筋の分極抵抗、コンクリート抵抗および鉄筋への酸素供給量をinput dataとするモデルを提案した。さらに、モデルを検証するため、水セメント比、塩化物イオン濃度、ひび割れ幅、湿度および温度をパラメータとし、モルタル供試体を用いた実験を行い、モデルの妥当性を検証した。 (2)マクロセル腐食が生じた鉄筋コンクリート梁部材における、腐食量と曲げ耐力の関係を整理できた。すなわち、腐食形態(局部腐食、全面腐食)が異なるモルタル共試体を用い、、目標侵食率5%、10%および20%における曲げ性状を実験により測定し、(1)全面腐食と比較して局部腐食では、曲げ破壊荷重および曲げ剛性の低下が著しいこと、(2)腐食量が増加すると、曲げ破壊荷重および曲げ剛性は低下すること、(3)局部腐食における目標侵食率が20%の時、曲げ破壊荷重は約50%に低下し、終局時には急激な破壊に至ること、を確認した。さらに、(4)上記の実験結果は、理論的にも検証されることを明らかにした。 (3)塩害あるいは中性化の促進暴露期間と実環境暴露期間を換算するモデルを構築できた。すなわち、促進暴露と実環境暴露を組み合わせた試験により、塩化物イオン浸透深さあるいは中性化深さの進行速度を求めた結果、通電法による屋内試験では約35倍、低圧法あるいは高CO_2濃度法による屋内試験では約10倍になることが明らかとなった。
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