橋梁は社会基盤としての道路網が健全に機能していく上で、最も重要な道路施設の内の一つである。橋梁の中でも橋梁延長が大きい鋼橋について、橋梁の架替工事の原因を調査した報告によると、上部工の損傷に伴う架替では、鋼材の腐食、床版の損傷のいずれかが原因となる場合が圧倒的に多いことがわかっており、鋼道路橋の延命を図るには床版の破損と鋼材の腐食を防止することが重要である。この二つの主要な損傷のうち、鋼材の腐食に関してはこれまでにも数多くの研究が行われてきたが、腐食によって鋼材に発生する損傷に対する調査が十分に行われているとはいえない状況にあり、腐食損傷の発生状況が鋼材の性能に与える影響に対して定量的評価が試みられた研究は極めて少ない。 このような状況をうけて、塗装などの処理を施した鋼構造部材に腐食損傷が発生した場合、その表面に何らかの変状が現れることを利用し、鋼構造部材の母材表面に発生した腐食損傷を複数のデジタルカメラから得られる画像により検出するシステムを構築し、その検出結果と実際に鋼構造部材の母材部分に発生している損傷との相関を明ちかにすることを目的とした研究を推進している。 本年度は画像処理システムの構築と塗膜の表面変形と腐食量の関係を明確にするための研究を進める為、デジタルカメラ3台を用いて、画像から部材表面の凹凸検出を行うためのシステム構築を試みている。このシステムを開発するにあたり、本研究室で保有している環境試験機を用いて鋼材に対し、環境促進試験を実施し、鋼材に腐食を発生させ、データの収集を行っている。しかしながら、システムの構築が遅れているため、疲労試験等の残存性能調査を実施するには至っておらず、今後、さらなる研究の推進を行う予定である。
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