本研究は、コンクリート構造物に発生する損傷(ひび割れ)を検出することを目的とし、構造物内部および外部の両面から複合的に診断する方法を確立するものである。初年度(平成15年度)は、構造物内部から診断することを目的として、(1)超音波受発信機器の製作とシステムの構築、(2)埋設超音波発信装置による構造物の損傷検出の2項目を主な研究実施内容とした。本年度の研究実績を以下に記す。 (1)超音波受発信機器の製作とシステムの構築 1)[センサー部の製作] 本研究では、構造物内部へのセンサ埋設を目的としているため、まずその設計・製作を行う必要がある。市販の圧電振動子を加工することで、構造物内部に埋設可能な超音波受発信機器(センサー部)を制作した。 2)[超音波受発信システムの構築] 超音波発信装置(信号発生器、高出力増幅器、センサー等)と超音波受信装置(AEセンサー、受信用アンプ)により超音波受発信システムを構築した。本計測システムより超音波による構造物形状測定を実現した。 3)[超音波受発信システムによる伝播特性の確認] 超音波の伝播特性の確認および、測定精度の評価を行うため、セメントペーストを材料とする供試体実験を実施した。一連の構造物形状測定結果より、材料と伝播速度の関係を評価した。 (2)埋設超音波発信装置による構造物の損傷検出 1)[超音波伝播特性の評価] (1)で作成したセンサーをセメントペースト構造体に埋設したときの伝播特性の評価を行った。液体中での施工性の確認とともに、固体中での超音波発振の確認を行い、本センサーの動作性能・耐環境性能について評価した。 2)[埋設振動子による構造物の形状測定および損傷検知実験の実施] 構造物の形状測定および、ひび割れによる供試体の損傷検出実験を実施した。さらに精度よく形状を測定するための課題を抽出した。 以上の内容の一部を土木学会研究発表会で報告した。
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