以下の3つの研究を平行して行い、岩石の凍上メカニズムの解明に取り組んだ。 1.実験装置を用いた凍上実験 本研究で使用した凍上実験装置について記す。供試体の上下端面の温度を、実験装置の上盤と下盤で制御する。上盤をマイナス、下盤をプラスの温度で制御することによって、供試体には温度勾配と0℃の凍結線が生じる。それらに加えて、下盤からは水分の供給も行う。このようにして寒冷地を想定した環境を実験装置によって作り出し、岩石に低温と水の影響を与え、凍上させる。 上記の実験装置を用いて岩石を凍結させ、以下の点について測定を行った。 (1)凍上性岩石と非凍上性岩石の判定。 大谷石、来待砂岩、丸瀬布凝灰岩を凍上性岩石、札幌軟石を非凍上性岩石と判定することができた。 (2)凍上量の測定。 2.凍上性をもつ岩石と凍上性を持たない岩石の物性値の比較 凍上性岩石と非凍上性岩石の物性値について比較を行い、どのような物性が凍上に影響を及ぼすのかを判断した。 3.AE計測システムを使用した凍上メカニズムの解明 岩石の凍上時に発生するAEを計測した。岩石が破壊される際に発生するAEを計測することによって、岩石の破壊メカニズムを解明しようという試みは多くの研究者によって行われているが、岩石の凍上時に発生するAEの計測は全く行われていない。凍上時に発生するAEを計測することができれば、凍上の初期段階における破壊を詳細に知ることができる。よって、岩石の凍上時に発生するAEを測定することは、凍上メカニズムを解明するうえで、有益であると考えられる。 岩石の凍上時に発生するAEを計測することに取り組んだ。凍上性岩石の大谷石では、アイスレンズが形成される直前にAEの発生数が最大となり、アイスレンズが成長している段階ではAEが発生していないことが明らかになった。加えて、大谷石に亀裂が発生する際のAEの波形を、オシロスコープを使用して観察・記録した。非凍上性岩石の札幌軟石では、岩石に破壊が生じないにも関わらず、AEが計測された。
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