研究概要 |
細粒分および海洋のカルシウム成分が含まれる実地盤から採取した砂を用いて実験し適用性を検討した。具体的には,沖縄の珊瑚混じり砂の不攪乱試料を大口径のラバル型サンドサンプラーを用いてサンプリングした。ラバル型サンドサンプラーは凍結サンプリングに代わる不攪乱砂の採取方法として有望な手法であり,今回世界で2例目の適用であった。この手法で採取した不攪乱の未改良砂供試体と,その不攪乱砂を一旦解凍してから再構成し,それに室内で浸透注入して作製した改良砂供試体の2種類を用いて,三軸圧縮試験ならびに中空ねじり試験を行った。その結果,カルシウムを多く含む砂であっても,原地盤と同様に拘束圧を作用させた状態で浸透注入を行えば,炭酸ガスの発生は抑制され,改良効果はカルシウムを含まない通常の砂と同様に大きいものであり,溶液型シリカによる地盤改良が適用可能であることが確かめられた。また,単調および繰返し中空ねじりせん断試験の結果より,前年度豊浦砂の実験結果で拡張した改良砂の構成式は,今回の砂であっても十分適用可能であることが確認され,広範囲の種類の改良地盤の動的解析に資するものであることがわかった。 この構成式を有効応力液状化解析コードに組み込み,実地盤の問題として,軟弱砂地盤の一次元液状化解析を行った。完全に液状化していた未改良砂地盤を,改良砂でモデル化することにより,液状化の発生が抑制される現象をシミュレートできた。また,既設タンクの浸透注入による液状化対策を具体例として選択し,3次元液状化解析を行った。その結果,タンク直下をリング状改良することにより,地震時の沈下量を抑制できることが確かめられるとともに,沈下量も定量的に算定できることができた。この解析は,実際の改良地盤を耐震設計する上で,高精度に変形量を予測することが可能であり,性能設計に十分に資するレベルのものであることが示された。
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