研究概要 |
芸予地震後の現地調査の結果,呉市では平野部と山地部の境界である丘陵地に被害が集中し,特に尾根上部に集中していたことが明らかとなった.今後のリスクマップ作成や耐震補強が必要な箇所の選定のための基礎的研究として、尾根部での地盤応答特性に及ぼす尾根形状の影響を明らかにすることが必要である。本研究では、小型振動台を用いた模型実験と原位置での常時微動観測を行い、それらと被害記録とを合わせて検討し,尾根部での地震時三次元応答について明らかにすることを目的としている。 今年度は両城地区を対象として,模型実験および常時微動観測を行った.まず測量結果を基に,模型を作成し,高さを変化させた模型を作成し、加振周波数を段階的に変化させながら加振を行い、尾根高さと加振周波数が尾根地形の地盤応答特性に与える影響について検討した。その結果頂上付近の揺れが最も大きくなる振動数では,頂上付近の揺れが大きい範囲と石積擁壁に被害が見られた範囲がほぼ一致することが分かった. また常時微動観測では,周辺地域に比べ,尾根部の卓越周期が短く,芸予地震時に花崗岩地盤上で観測された強震記録の卓越周期とほぼ一致していることが明らかとなり,地震時には共振していた可能性が高いことが分かった.また宅地内での卓越周期の違いについて検討したが,石積擁壁の高さ,石積擁壁までの距離,家屋までの距離による違いは小さく,尾根高さ方向に卓越周期に変化がないことも分かった.しかし芸予地震時に被害が見られた宅地では,健全な宅地に比べ卓越周期が長くなっていることが分かった.芸予地震後には尾根部ではこれまで被害が発生しなかったような少雨でも崩壊が引き起こされており,地震により宅地が不安定化されたものと判断される.したがって地震による石積擁壁の地震後の安定性を常時微動観測による評価できる可能性があることを示している.
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