既設構造物直下の地盤の液状化対策として注目されている薬液注入工法により形成される固化体の繰返し強度と、弾性波伝播速度から得られる固化体の微小変形特性を調べることを目的として、室内実験を行なっている。実験には、注入材に特殊シリカ系薬液(シリカ濃度6%)、供試体作製方法には水中落下法と湿潤締固め法の2種類を用いて浸透固化処理された豊浦砂供試体を作成し、弾性波伝播速度計測と非排水繰返し三軸試験を同時に行なうことのできる試験機を用いることにより、P波・S波速度の計測と繰返し強度の測定を行った。弾性波伝播速度に関する実験結果として、P波速度とS波速度をB値に対してプロットし、多孔質弾性波理論から導出される理論式との比較を行なった。実験結果から、水中落下法で作成した供試体は比較的充填率が大きく高いB値をとるが、湿潤締固め法で作成した供試体は充填率が75%程度で低いB値のみとり得ること、S波せん断波速度はB値によらず一定値をとること、P波速度の値から骨格ポアソン比vbは未改良の豊浦砂と比較して0.5に近い高い値をとることが示された。これは薬液ゲルのポアソン比の影響を大きく受けた結果であると考えられる。またこれらの速度値を換算すると、改良砂のせん断弾性係数Gは未改良砂と比較して大差ない結果となったが、改良砂の体積弾性率Kは未改良砂と比較して数倍大きい値をとることが示された。一方、改良砂の繰り返し強度については、未改良の飽和豊浦砂と比較して、2倍から3倍に至ることが示された。
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