既設構造物直下の地盤の液状化対策として注目されている薬液注入固化工法により形成される固化体の繰返し強度と、弾性波伝播速度から得られる固化体の微小変形特性を調べることを目的として室内試験を行なっている。注入材に特殊シリカ系薬液(シリカ濃度6%)、供試体作製方法には湿潤締固め法を採用し、浸透固化処理された豊浦砂供試体を作製し、弾性波伝播速度計測と非排水繰返し三軸試験を行なっている。今年度はとくに、昨年度の研究で課題となっていた、(1)薬液注入前に供試体内に通気・通水を行ない、地下水面以深の砂地盤への薬液注入を模擬すること、(2)実地盤内での薬液注入と養生時の応力状態を模擬するため、薬液注入時と養生時に一定の拘束圧をあたえること、を行ない、それらが弾性波伝播速度と繰返し強度にどのような影響を与えるかを調べた。(1)に関しては、弾性波伝播速度に関しては、Vs値については供試体の密度のみに影響され、間隙のゲル状物質の状態によらない結果となった。Vp値については、昨年度の通気・通水を行なわなかった供試体では、B値もほぼ0.4以下に抑制されVp値も飽和状態より低い値を示し、薬液ゲルと気泡で間隙が構成されている様子が伺えたが、今年度の通気・通水を行なった供試体では、B値は0から1まで変化し、Vp値も1500〜1600m/sの値を示し、薬液ゲルの構造とともに不完全飽和状態にある間隙水&気泡の内部構造が存在することがわかった。また繰返し強度に関しては、通気・通水により飽和度が高まり、昨年度と比べわずかながら低くなった。(2)に関しては、拘束圧下で薬液注入と養生を行なうと、Vpが1700m/s程度で一定となる供試体と、B値の減少にともないV_pも減少する供試体も存在した。これは、養生中に作用させた拘束圧が、間隙に存在する薬液ゲルの構造に微細な変化をもたらすためと考えられる。しかし、Vs値と繰返し強度には影響はほとんど見られなかった。
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