今年度の研究では、黄鉄鉱の酸化に伴う地盤の酸性化が土の(1)強度や(2)コンシステンシーにどのような影響を及ぼすのかを詳細に検討した。なお、実験に用いた粘性土試料は、石川県河北郡津幡町北中条地内(石川工業高等専門学校近傍)において採取した。 (1)では、湿潤状態にて段階的に酸性化させた粘性土の締固め試料を用いて一軸圧縮試験を実施した。また、酸性化する過程で土中の黄鉄鉱が消失することも電子顕微鏡写真より確認した。一軸圧縮試験の結果、pHの低下に伴って一軸圧縮強度と変形係数は減少し、破壊ひずみは増加する傾向を示した。特に、変形係数と破壊ひずみはpHが4.0までの間で変化が著しいことがわかった。今後は、中性に近い状態(pH6.0以上)の試料を用いて同様の試験を行う予定である。 (2)では、(1)と同様に湿潤状態にて段階的に酸性化させた粘性土試料を用いて、液性・塑性限界試験を実施した。また、イオンクロマトグラフ法によって実験に用いた試料の硫酸塩含有量を測定し、酸性化させたそれぞれの試料に対して定量的な評価を行った。その結果、コンシステンシー限界とpHの間には密接な関係があり、pHの変化には黄鉄鉱の酸化に伴う硫酸の生成が大きく関わっていることが明らかになった。この硫酸の生成が強熱減量など士の基本的な物理量を大きく変化させ、結果的にコンシステンシー限界に多大な影響を与えるものと考えられる。今後は、イオンクロマトグラフ法をさらに活用し、硫酸塩のみならず、カルシウムやナトリウムなどの水溶性成分についても測定し、コンシステンシーとの因果関係について考察を加えていきたい。
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