研究概要 |
本年度の成果として、大きく分けて2つの成果がある。第一に対象としたメコン河カンボジアにおける洪水氾濫モデルの開発、第二に単位面積当たりの農業と水産業の便益を求めたことである。 洪水氾濫モデルについてメコン河、トンレサップ川、バサック川の河道部においてダイナミックモデルを適用した。4つの河川それぞれの水位データを入力条件として、河道祖度係数、河道幅等をUSGSデータから推定した。その結果、4つの河川が合流、分流するプノンペンにおいて水位を検定した結果、観測データとの間に高い相関係数を示し、モデルの妥当性が証明された。氾濫原では、越流モデルにより河道と連結させ不等流モデルによって氾濫を表現した。この時系列データの検証は出来ないが、衛星写真からの瞬間氾濫域と合致しており信頼できるものとした。また、氾濫モデルを地下水涵養の簡易モデルに連結させ、観測している地下水位データから透水係数を推定し、良好な時系列データを得た。しかし、透水係数は非現実的な値となり、その考察は今後の課題である。 便益の原単位は、生産物の平均価格と単位面積当たりの生産量を評価することから計算した。文献調査と市場調査によって米と水産業の平均価格を調査した。その結果、カンボジアの米の平均価格は0.1USD/kg、水産物は平均1USD/kgという値が得られた。また、単位面積の生産量はカンボジア政府の資料によった。この両結果から農業生産物の単位面積生産価格を4,000USD、水産生産価格を1,500USDとし、これらを便益原単位とした。これらの値が氾濫域の水供給のある地域に適用されるとし、氾濫便益を計算した。その結果、カンボジアの場合、洪水による損害より便益の方がはるかに大きいことが理解された。
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