研究概要 |
調査対象に設定した荒川下流域において,調査可能なヨシ原を抽出するための予備調査と,既往の調査実績について調査を実施した.荒川のヨシ原の多くは低水護岸内に存在するが,大きなものは,古い高水敷が地盤沈下により低下し,それが新たな低水護岸内に取り残されたものが多いことが判明した.また,荒川下流部は多くのタンカーが航行し,航走波による河岸植生への悪影響が問題視され,規制が行われているが,水位がヨシ群落先端付近にある場合には航走波によるダメージが相当あるものと考えられた.ヨシ生息地盤高とヨシの生長との問に相関は無く,各ヨシ原間のヨシの生長度合いの違いは,土壌の違いによるところが大きいものと考えられた. 現地観測で用いるセンサー類の開発や測定手法の選定を,環境の安定した一般的な湿地において実施した.その観測により,興味深い結果が得られたため,内容を研究発表した. また,潮汐を模した水位変動を表現可能な自動制御の可変水位実験水槽を試作し,大学構内において予備実験を行った.装置完成が9月であったため,十分にヨシを植栽して実験することはかなわなかったが,装置の稼動,ヨシの生長ともに良好であることが確認された.水槽を用いた予備実験では,水位を固定したものよりも,水位を変動させたものの生長が良好であった.この結果から,感潮河川の水位変動がヨシの生長にプラスに働いていることが示唆されるものの,自然環境においての観測は難しく,機構の解明など次年度への課題が残されている.
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